IATF 16949 8.4.2.2項:法令・規制要求事項【要求事項解説】

はじめに

IATF 16949は自動車業界における品質マネジメントシステムの国際規格であり、品質を維持するために重要な要求事項を規定しています。

その中で「8.4.2.2 法令・規制要求事項」は、特に購入した製品、プロセス、サービスが法令や規制に適合しているかどうかを確実にするためのプロセスの確立を求めています。

この要求事項は、組織がグローバルに事業を展開する際に直面するさまざまな法的要求に対する適合を確保するために重要な指針を提供します。

本記事では、「8.4.2.2 法令・規制要求事項」の要求内容を詳細に解説し、企業がどのように実践するべきかについて具体的なアプローチを説明します。

 

1. 法令・規制要求事項の重要性

自動車業界では、製品が提供される国や地域によって異なる法令・規制が適用されることが一般的です。

例えば、安全基準や環境規制、化学物質の使用規制など、多岐にわたる法令や規制が製品に影響を与えます。

これらの規制に適合しない製品を市場に出すことは、法的責任を問われるだけでなく、企業の信用を失い、最終的には市場からの排除や製品のリコールを引き起こす可能性もあります。

そのため、IATF 16949の「8.4.2.2 法令・規制要求事項」では、組織が購入する製品やサービスが、出荷先国および顧客が指定する法令・規制に適合することを確保するためのプロセスを文書化することを求めています。

このプロセスは、法的リスクを最小限に抑えるために欠かせないものです。

 

2. 法令・規制要求事項への適合を確保するプロセスの文書化

組織が購入した製品、プロセス、サービスが法令・規制要求に適合しているかを確実にするためには、まずそのプロセスを文書化する必要があります。

このプロセスには以下の要素が含まれるべきです。

2.1 法令・規制の特定

まず最初に、組織が供給者から購入した製品やサービスが提供されるすべての国・地域における法令・規制を特定し、それらが製品に適用されるかどうかを判断する必要があります。

これには、受入国、出荷国、そして顧客が指定した仕向国におけるすべての法令を網羅的に調査することが求められます。

例えば、製品がEU諸国に出荷される場合、EUの化学物質規制であるREACH規制やRoHS指令、あるいは製品安全性に関する規制が適用されることがあります。

アメリカ向けに出荷される製品には、米国食品医薬品局(FDA)や環境保護庁(EPA)の規制が関係する場合もあります。

2.2 適合性の評価

法令・規制を特定した後、それに適合するために必要な措置を講じる必要があります。

具体的には、各製品やサービスが、該当する規制要求を満たしているかを評価します。

これには、製品が規制に適合している証拠(例えば、認証書類や試験結果)を収集・管理することが含まれます。

もし製品が特定の法令・規制に適合していない場合、その製品を修正・改良するか、供給者と連携して必要な変更を加える必要があります。

また、適合しない場合は、その理由を明確にし、顧客や関係当局に対して適切な説明ができるように準備します。

2.3 適合管理の文書化

適合性を確認するために実施した活動や評価の結果を文書化することも求められます。

これには、以下のような文書が含まれます。

  • 法令・規制要求を満たすための具体的な手順書やガイドライン
  • 適合性評価に使用した試験結果や検証報告書
  • 監査記録や供給者からの証明書類

これらの文書を適切に管理し、必要に応じて監査やレビューを通じて見直しを行います。

また、法令・規制の変更があった場合に即座に対応できるようにするため、文書の管理システムを構築しておくことが重要です。

 

3. 顧客が指定した法令・規制要求の管理

顧客が特別な法令・規制要求を指定する場合、その管理を適切に実施する必要があります。

顧客が規定する要求に基づいて、製品やサービスが提供される国や地域で適用される法令・規制に準拠していることを確保するためには、組織と供給者、さらには顧客との協力が不可欠です。

3.1 特別管理の実施

顧客が特別に管理を求める場合、例えば、製品に特定の安全基準や環境規制を適用するよう要求された場合、その要求を確実に実施し、維持するためのプロセスが必要です。

これには、顧客要求に基づいた設計や製造プロセスの改良、追加の品質検査の実施などが含まれます。

例えば、顧客から求められる環境基準(例えば、化学物質の制限やエネルギー効率基準)に適合するために、製造工程を見直し、適切な認証を取得する必要がある場合があります。

3.2 供給者との連携

顧客が指定した法令・規制要求に適合するためには、供給者とも密接に連携する必要があります。

例えば、供給者が提供する部品や材料が規制に適合していない場合、組織は供給者と協力してその適合性を確認・確保する措置を講じる必要があります。

供給者に対しても、顧客の要求事項に適合する製品を提供するように指示し、必要な証明書類を提供させることが求められます。

 

4. 結論

IATF 16949の「8.4.2.2 法令・規制要求事項」の要求は、組織が購入した製品やサービスが法令・規制要求に適合していることを確実にするための重要な指針です。

企業は、購入製品の適合性を確認し、その適合を確保するための文書化したプロセスを整備することが求められます。

さらに、顧客が指定した特別な法令・規制要求がある場合は、その要求に適合するための管理方法を確立し、供給者と連携して適切に実施・維持することが求められます。

このような法令・規制要求への対応は、企業が法的リスクを回避し、顧客の信頼を維持するために欠かせない要素です。