IATF 16949 10.2.4項:ポカヨケ 【要求事項解説】

1. はじめに

製造業における品質管理は、製品の品質を確保するために非常に重要です。

特に、製造工程における人為的エラーを防ぐための手法は、欠陥の発生を抑制し、顧客の信頼を得るために欠かせません。

そのために活用されるのが、**ポカヨケ(Poka-Yoke)**です。

ポカヨケは、日本のトヨタ生産方式(TPS)で発展し、品質管理の手法として世界中の製造業で広く取り入れられています。

IATF 16949規格においても、ポカヨケ手法の導入は必須となっており、製造過程で発生しうる不良を予防するために組織全体で適切に管理することが求められています。

本記事では、IATF 16949に基づくポカヨケの要求事項を解説し、組織がどのようにポカヨケを活用して品質向上に貢献するかを考察します。

 

2. ポカヨケの概要

ポカヨケは、製造プロセスにおける「人為的ミス」を未然に防ぐための手法であり、「誤り防止」「エラー防止」などの意味を持ちます。

具体的には、製造ラインでの作業者や工程における誤りを排除するための技術的・組織的な手段を指します。

ポカヨケの目的は、製品が規定の仕様を満たさない「不適合」を防ぐことです。

これを達成するために、ポカヨケは以下のような方法で導入されます。

  • 機械的制御:例えば、部品が正しく組み込まれるように形状やサイズを調整する。
  • 自動化によるエラー防止:間違った部品の組み込みを防ぐための自動ロック機構を設ける。
  • 検出機能:誤操作や不良を自動で検出するセンサーを設置する。

ポカヨケ手法は、組織が生産の各段階で品質を確保し、作業員のミスを防ぐために重要な役割を果たします。

 

3. ポカヨケ手法の文書化と選定

IATF 16949規格では、ポカヨケ手法の導入に際して、文書化されたプロセスを持つことが求められています。

具体的には、以下の内容が求められます。

(a) ポカヨケ手法の選定

組織は、どのポカヨケ手法を導入するかを決定し、その選定理由や方法を文書化しなければなりません。

この決定は、製造過程で発生するリスクを評価したうえで行います。

リスク分析を通じて、どの工程でエラーが起きやすいのかを評価し、その結果に基づいて最適な手法を選ぶことが求められます。

一般的に使用されるポカヨケ手法には以下のようなものがあります。

  • 機械的ポカヨケ:部品が逆に取り付けられないように形状を工夫する、または部品の取り付け位置を固定する。
  • 電気的ポカヨケ:センサーによって誤操作を防ぐ。例えば、部品が正しく取り付けられていない場合にアラームを出す。
  • 視覚的ポカヨケ:作業者が誤って作業を進めないようにするための色分けやインジケーターの使用。

これらの手法は、リスク分析(例えばPFMEA)を基に選定され、その詳細は文書として記録されます。

(b) 試験頻度の設定

ポカヨケ手法を選定した後、その試験頻度を決定し、コントロールプランに記載する必要があります。

試験は、ポカヨケ手法が確実に機能しているかを確認するための重要なステップです。

例えば、ポカヨケ装置が故障していないか、または部品の取り付けが誤っていないかを定期的にチェックする必要があります。

これにより、ポカヨケ装置が確実に稼働しているかどうかを検証し、製造ラインでの不良発生を防ぎます。

 

4. ポカヨケ装置の故障管理

ポカヨケ手法を採用する際、ポカヨケ装置の故障模擬故障のテストも重要な要素となります。

もしポカヨケ装置が故障した場合、製造ラインでの誤りが発生するリスクが高まります。

このため、組織は次の点を管理する必要があります。

  • 故障時の対応計画:ポカヨケ装置が故障した場合、その修理や交換の手順を事前に定め、速やかに対応できるようにします。これにより、製造ラインでの不良やエラーを迅速に防止することができます。
  • 模擬故障テスト:ポカヨケ装置が故障した際の影響を評価するため、定期的に模擬故障テストを行うことが求められます。このテストは、実際の故障をシミュレートし、その結果を記録することで、装置の不具合を早期に発見し、改善することを目的としています。

ポカヨケ装置が故障した場合の影響を最小限に抑えるためには、事前の対策が不可欠です。

 

5. チャレンジ部品の管理

さらに、ポカヨケ装置を使用する際には、チャレンジ部品の管理も重要です。

チャレンジ部品とは、ポカヨケ装置のテストに使う部品であり、通常の部品と異なる特性を持つ場合があります。

これらの部品は、ポカヨケ手法が正常に機能しているかをテストするために使用されます。

これらの部品は、可能であれば識別し、管理し、検証し、必要に応じて校正する必要があります。

これにより、テストの信頼性を確保し、誤った部品を使用してテストが行われることを防ぎます。

 

6. 結論

IATF 16949規格における「ポカヨケ」要求事項は、製造工程における人為的エラーを未然に防ぐための効果的な手段を提供します。

ポカヨケ手法を文書化したプロセスに基づき、組織はリスク分析を行い、適切な手法を選定し、試験頻度や故障管理、チャレンジ部品の管理などを行うことが求められます。

これにより、製造過程でのエラーを削減し、品質の向上と顧客満足度の向上に寄与することができます。

ポカヨケ手法は、単なる技術的対策にとどまらず、組織全体で品質を確保するための重要なステップとなります。