1. はじめに
「6.3 変更の計画」において、品質マネジメントシステムの変更をどのように計画し、実施するべきかが詳細に規定されています。
変更には、組織内で新しいプロセスを導入したり、既存のプロセスを改善したり、あるいは外部の要求に対応するために品質マネジメントシステム自体に手を加えることが含まれます。
こうした変更は、無計画に行うと混乱を招いたり、予期せぬ問題を引き起こしたりすることがあるため、計画的に進める必要があります。
本記事では、「6.3 変更の計画」の要求事項を基に、品質マネジメントシステムにおける変更をどのように計画・管理すべきかについて解説していきます。
2. 変更計画の重要性
2.1 変更によるリスク
組織が品質マネジメントシステムに変更を加える際、その変更は必ずしも良い結果を生むとは限りません。
変更にはリスクが伴います。
例えば、新しいプロセスやシステムが既存のプロセスと整合性を欠いていたり、新しい技術が導入された場合に従業員がその扱いに慣れていなかったりすることがあります。
こうした問題が発生すると、品質が低下し、最終的に顧客満足度にも影響を与えることになります。
また、無計画に行われた変更は、既存の品質マネジメントシステムの「完全性」(integrity)を損なう可能性があります。
組織が変更を加える目的や、その変更がどのような結果を招くのかを明確にしないまま変更を進めると、システムの一貫性が崩れ、品質マネジメントシステムが意図した結果を達成できなくなります。
2.2 計画的な変更のメリット
「6.3 変更の計画」では、変更が計画的に行われるべきであることが強調されています。
計画的な変更を行うことで、次のようなメリットが得られます。
- リスク管理:変更によって生じるリスクを予測し、リスク軽減策を講じることができます。
- 品質の一貫性の確保:変更が品質マネジメントシステムに与える影響を理解し、システムの整合性を維持することができます。
- リソースの最適活用:変更に必要な資源を適切に確保し、過不足なく変更を実行できます。
- 責任と権限の明確化:変更に関わる人々の責任や権限を明確にすることで、スムーズな実施が可能になります。
3. 要求事項解説
「6.3 変更の計画」では、品質マネジメントシステムの変更を計画的に実施するために、組織が考慮すべき事項がいくつか挙げられています。
それぞれの項目について、どのように実行すべきかを見ていきましょう。
a) 変更の目的、及びそれによって起こり得る結果
変更を加える前に、その目的を明確にし、変更がもたらす結果について予測しなければなりません。
組織は、変更の目的が明確でなければ、変更が成功する可能性を低くしてしまいます。
たとえば、新しい技術を導入する場合、その技術がどのように業務に貢献するのか、あるいはどの部分に改善が期待できるのかを明示することが必要です。
また、変更によって生じる可能性のある結果(良い結果、悪い結果、予期しない結果)を十分に検討し、予測することで、リスクを事前に特定し、管理することができます。
これにより、変更がもたらす影響を最小限に抑えることができます。
b) 品質マネジメントシステムの「完全に整っている状態」(integrity)
品質マネジメントシステムの変更に際して、その完全性を維持することが重要です。
品質マネジメントシステムの完全性とは、システムの一貫性や整合性を指します。
変更を加えることでシステムの構造が乱れたり、部分的な不整合が生じることがないように計画を立て、管理する必要があります。
品質マネジメントシステムは、あらゆる業務プロセスと連携しているため、変更がそれらのプロセスに与える影響を慎重に評価する必要があります。
例えば、品質目標や計画、監視・測定の手法が変更後も適切に機能するか、過去の記録が正しく保持されるかなどを確認する必要があります。
c) 資源の利用可能性
変更を実施するには、必要な資源(人員、設備、財源など)が利用可能であることを確認する必要があります。
計画的な変更を進めるためには、リソースの確保が不可欠です。
変更に伴う新しい設備の導入や従業員の教育・訓練、または新しい技術の導入など、必要なリソースを事前に整えることが重要です。
d) 責任及び権限の割当て又は再割当て
変更を実施する際、関与する各担当者に対して責任や権限を明確に割り当てることが不可欠です。
変更プロジェクトには複数の関係者が関与するため、各人が自分の役割と責任を理解し、適切に行動することが重要です。
トップマネジメントは、変更に関連する各部門に責任を明確に割り当てると共に、権限を適切に付与し、実行に必要な支援を行うべきです。
4. 結論
「6.3 変更の計画」の要求事項は、品質マネジメントシステムにおける変更を効果的に管理するための指針を提供しています。
変更を計画的に進めることで、品質システムの整合性を保ち、リスクを適切に管理することができます。
また、変更の目的やその結果、必要なリソースや責任の割当てを事前に検討することで、変更後の効果を最大化することが可能です。
変更管理のプロセスは、品質マネジメントシステムが一貫して有効に機能し続けるために欠かせない要素です。
組織は、規格の要求事項を踏まえ、計画的な変更を実施し、持続的な改善と品質の向上を目指していくべきです。
5. 関連項番
以下、関連項番の要求事項解説もあわせてご活用ください。
5.1 関連度:大(併読を推奨)
5.2 関連度:小