目次
はじめに
IATF 16949は、自動車業界の品質管理に関する規格であり、品質を確保し、継続的に改善するための要求事項を詳細に定めています。
その中で「7.1.5.1 一般」という要求事項は、製品およびサービスの適合性を確認するために使用される「監視及び測定」に関する重要な規定です。
監視や測定は品質管理の核心を成す要素であり、製品の品質やプロセスの効果を確認するための手段として活用されています。
この記事では、「7.1.5.1 一般」の要求事項について、具体的な内容を解説し、企業がこの要求を満たすために必要なアクションや注意点を詳しく説明します。
1. 監視および測定の重要性
IATF 16949において、監視および測定は品質マネジメントシステムの中心的な要素です。
製品の品質を維持し、改善するためには、プロセスや製品の状態を定期的に監視し、測定することが必要です。
この活動は、単に製品が要求される仕様を満たしているかを確認するためだけでなく、工程が安定しており、問題が早期に発見されることを保証するためにも重要です。
「7.1.5.1 一般」では、監視および測定のためのリソースに関する具体的な要求が記載されています。
組織はこれらの活動が信頼性があり、適切に実施されるための資源を提供する必要があるとされています。
つまり、監視・測定を行うためには、単に手段を用意するだけではなく、その適切性を維持し、信頼性を確保することが求められています。
2. 監視および測定のために必要な資源
「7.1.5.1 一般」における最も重要な点は、監視および測定活動を適切に実施するために必要な資源を明確にし、提供することです。
具体的には、以下の3つの要素に着目する必要があります。
a) 実施する特定の種類の監視および測定活動に対して適切であること
監視および測定活動は、製品やプロセスの特性に応じて適切である必要があります。
例えば、品質管理のために使用する測定機器や監視方法は、製品の特性（寸法、重量、性能など）やプロセスの種類（組立、加工、検査など）に合致していなければなりません。
すべての監視および測定活動が同じ手法や機器で行えるわけではないため、使用する機器や方法は、その目的に適したものを選定し、使用することが求められます。
b) その目的に継続して合致することを確実にするために維持されていること
監視および測定に使用するリソース（設備、機器、システムなど）は、単に一度用意するだけでなく、継続的に目的に合致した状態で維持される必要があります。
たとえば、測定機器が正確で信頼できるものでなければならず、定期的な校正やメンテナンスが必要です。
また、測定手法自体も定期的に見直し、必要に応じて改善していくことが求められます。
測定機器が不適切であれば、製品の品質に影響を及ぼす可能性があるため、資源の維持管理は品質を守るための基本です。
c) 適切な文書化した情報の保持
監視および測定に関する資源が適切であること、またそれが維持されていることの証拠として、適切な文書化された情報を保持することが必要です。
この文書化された情報には、使用した測定機器やその校正記録、監視方法の詳細、実施した監視の結果などが含まれます。
文書化された情報は、監査や内部チェックにおいてその適切性を証明するための重要な証拠となります。
また、万が一不適合が発生した場合、その根本原因を追求し、是正処置を行うための手掛かりとしても活用されます。
3. 資源の提供と維持の実践
監視および測定活動に必要な資源を提供し、維持するために企業が実施すべき具体的なアクションについて説明します。
3.1 適切な測定機器の選定
測定活動において使用する機器やツールが適切であることが基本的な要件です。
測定機器の選定においては、次の点を考慮します：
- 精度と信頼性：測定機器が製品やプロセスの仕様に合致した精度を持っているかを確認します。例えば、寸法測定にはマイクロメーターやノギス、性能測定には専用の試験機などを使用します。
- 校正記録：使用する機器が定期的に校正され、常に正確な測定結果が得られる状態であることが求められます。校正記録は文書化して保存し、監査時に提出できるようにします。
3.2 継続的な維持管理
測定機器や監視活動を適切に維持するためには、次の取り組みが重要です：
- 定期的な校正と検査：機器が継続的に適切に機能するためには、定期的な校正と検査を行う必要があります。校正が適切でないと、測定結果に誤差が生じ、品質に悪影響を与える可能性があります。
- 維持管理計画の策定：監視および測定に使用する機器のメンテナンス計画を策定し、定期的に点検や修理を行うことが求められます。故障や劣化が発生する前に、早期に問題を発見し、対処することが重要です。
3.3 文書化された情報の管理
監視および測定に関する活動のすべては、文書化されるべきです。
これにより、以下のようなメリットがあります：
- 監査対応：品質マネジメントシステムの監査時に、適切な文書化された情報があることで、監査員に対して証拠を提供できます。
- 不適合の早期発見：測定結果や監視記録を分析することで、不適合や問題点を早期に発見し、是正処置を講じることができます。
- 改善のためのデータ活用：文書化された情報は、改善活動に活用されます。過去の測定結果や監視データを分析することで、プロセスの改善点を特定することができます。
4. まとめ
IATF 16949の「7.1.5.1 一般」における要求事項は、監視および測定活動を適切に実施するための資源提供とその維持に関する重要なガイドラインを示しています。
企業は、監視および測定活動を支える資源がその目的に適切であり、継続的に維持されることを確実にし、またその証拠として適切な文書化された情報を保持することが求められています。
適切な資源の提供と維持は、品質マネジメントシステムの信頼性を高め、製品やサービスの品質を確保するために不可欠です。
企業がこの要求事項を満たすことで、製品の適合性を確保し、顧客の信頼を得ることができます。
IATF 16949を実践する企業にとって、監視および測定のリソース管理は重要なポイントであり、常にその適切性と信頼性を維持することが、品質向上のための第一歩と言えるでしょう。
