IATF 16949 8.6.3項:外観品目【要求事項解説】

1. はじめに

自動車業界において、製品の品質はその機能性や耐久性だけでなく、外観にも大きく依存しています。

特に、顧客にとって製品の外観は、品質を判断する重要な指標のひとつであり、見た目に対する要求が厳しくなる一方です。

IATF16949では、外観に関する要求を明確に定め、組織に対して製品の外観に対する品質基準を満たすための取り組みを求めています。

本記事では、IATF16949「8.6.3 外観品目」に関連する要求事項について、どのように実施すべきかを解説します。

要求事項を順を追って説明し、実際の製造現場でどのようにこれらの要求を満たすかに焦点を当てます。

特に、外観品目として顧客に指定された製造部品に対して求められる評価方法や資源の提供方法に関して、詳しく説明します。

 

2. 外観品目に対する要求事項

2.1 外観品目とは

「外観品目」とは、顧客が製品の外観に対して特定の要求を行った部品や製品のことを指します。

自動車の部品や車両においては、塗装の仕上げや金属部品の光沢、組み立て部品の外観、さらには表面に施された装飾やロゴの状態など、見た目の品質が非常に重要です。

特に、顧客が外観に関する詳細な要求を定めている場合、これらの要求に従って適切な評価と管理を行うことが求められます。

2.2 顧客の外観に関する要求

IATF16949では、顧客から要求された外観に関する品質基準を満たすために必要な措置を講じることが義務付けられています。

顧客からの外観要求は、色や光沢感、表面の仕上がり、さらには手触りや触感にまで及ぶことがあります。

これらを満たすために、組織は以下のような取り組みを実施しなければなりません。

 

3. 外観品目の評価に必要な資源

3.1 適切な照明の提供

外観品目の評価を正確に行うためには、適切な照明を使用することが非常に重要です。

照明条件が不適切であると、色の違いや仕上がりが正確に判断できない場合があります。

そのため、IATF16949では、外観評価のために必要な適切な照明を提供することを求めています。

照明の要件

外観品目を評価する際に使用する照明は、製品の色味や仕上がりを適切に表示できるように、一定の基準を満たしている必要があります。

たとえば、光の色温度や明るさの管理、均等な照明環境を確保することが求められます。

また、照明の角度や配置にも配慮し、製品が最も正確に評価できる状態を作り出さなければなりません。

3.2 色、光沢、風合いなどの基準

外観品目に関する評価基準には、色、光沢、金属性光沢、風合い、そして「イメージの明瞭さ(DOI: Distinctness of Image)」などの要素が含まれます。

これらの基準を顧客が指定することが一般的であり、評価者はこれに基づいて製品の外観を評価します。

  • : 色は外観評価の最も基本的な要素の一つです。色の違いは、製品の品質やブランドイメージに直接影響を与えるため、正確に評価することが求められます。
  • 光沢: 金属部品や塗装仕上げの表面光沢も重要な評価項目です。光沢の程度や均一性が、製品の完成度を示す重要な指標となります。
  • 金属性光沢: 金属部品や塗装部品において、特に金属的な光沢が求められる場合があります。これにより、部品が高級感や耐久性を持っていることを示すことができます。
  • 風合い: 触感も製品の外観評価には重要です。触ったときの手触りや質感が、製品の品質を示す一つの要素として評価されます。
  • DOI(イメージの明瞭さ): 光沢のある表面では、DOIが非常に重要です。DOIは、表面の滑らかさや反射の明瞭さを測定する指標であり、製品の外観に対する要求を満たしているかを確認するために用いられます。

これらの評価基準を顧客が定めた場合、組織はこれらの基準に従って外観を確認し、製品が要求通りであることを保証する必要があります。

 

4. 外観マスターと評価設備の管理

4.1 外観マスターの管理

外観品目の評価において重要なのは、評価基準を明確に示した「外観マスター」を使用することです。

外観マスターとは、製品の理想的な外観状態を示すサンプルのことです。

このサンプルは、製品の色や光沢、風合いなどの要求基準を満たす製品の見本として、製造部門や品質管理部門で参照されます。

外観マスターは、評価を行う際の基準となるため、常に適切に保管・管理し、劣化や損傷がないように注意しなければなりません。

また、外観マスターが実際の製品と一致しているかを定期的に確認することも重要です。

4.2 評価設備の保全と管理

外観品目を正確に評価するためには、評価設備が正しく保守・管理されていることが求められます。

これには、評価用の測定機器や照明設備、外観マスターを適切に管理するための管理プロセスが含まれます。

評価設備が適切に動作していない場合、外観評価が不正確になり、品質問題を引き起こす可能性があります。

評価設備は、定期的にメンテナンスを行い、その精度を維持することが必要です。

また、設備の変更や修理が行われた場合は、評価基準が変わらないように十分な確認を行い、適切な校正を行わなければなりません。

 

5. 外観評価を実施する要員の力量

5.1 要員の資格と教育

外観品目の評価は、単純な作業ではなく、専門的な判断が必要です。

したがって、外観評価を行う要員は、高い力量と適切な教育を受けていることが求められます。

IATF16949では、外観評価を実施する要員の力量を確認し、適格性を証明することが必要であると規定されています。

要員は、製品の外観に関する基準や評価方法について十分に理解し、トレーニングを受けることが求められます。

また、評価者の判断が一貫していることを確認するために、定期的に評価の精度や適切性をチェックするプロセスも重要です。

 

6. 結論

IATF16949「8.6.3 外観品目」の要求事項は、製品の外観が顧客の厳しい要求を満たすことを保証するための重要な指針です。

外観品目の評価には、適切な照明、色・光沢・風合いの基準、外観マスターの管理、評価設備の保全、そして評価要員の力量が重要な要素となります。

組織は、これらの要求を順守し、外観評価を体系的に実施することで、顧客の信頼を得ることができます。

外観品目に関する適切な管理と評価を通じて、製品の品質を高め、最終的に製品が市場で高い競争力を持つことを実現することができるのです。