IATF 16949 8.6.4項:外部から提供される製品及びサービスの検証及び受け入れ【要求事項解説】

1. はじめに

自動車産業において、製品の品質は最も重要な要素の一つです。

高品質な製品を市場に提供するためには、原材料や部品、サービスなど、外部から供給されるすべてのリソースが品質基準を満たしていることを確保する必要があります。

IATF16949では、外部から提供される製品やサービスの品質を確保するために、組織がどのような方法を用いて受け入れ検査や評価を行うべきかを定めています。

本記事では、IATF16949の「8.6.4 外部から提供される製品及びサービスの検証及び受け入れ」について、その要求事項を順を追って説明し、実際にどのようにして外部供給者から提供される製品やサービスを評価し、受け入れるかに焦点を当てます。

 

2. 外部から提供される製品及びサービスの検証

2.1 外部供給者から提供される製品及びサービスの重要性

自動車産業において、製造業者は自社で全ての部品や原材料を調達するわけではなく、外部の供給者から提供された部品やサービスを使用します。

これらの外部供給品が品質基準を満たしていない場合、最終製品に不具合が生じる可能性があり、その結果、リコールや顧客クレーム、ブランドイメージの損失など、深刻な問題を引き起こすことがあります。

したがって、外部供給者から提供された製品やサービスが規定された品質基準を満たしているかどうかを、組織は適切に検証し、確認するプロセスを構築する必要があります。

IATF16949の「8.6.4」では、この検証プロセスに関する要求事項が示されています。

2.2 検証方法の選定

IATF16949では、外部から提供される製品やサービスの検証に使用すべき方法として、いくつかの選択肢を提示しています。

これらの方法は、製品やサービスの性質やリスクに応じて選ばれるべきです。要求事項に記載された選択肢は、以下の5つの方法です。

 

3. 外部提供品の検証方法

3.1 供給者から提供された統計データの受領及び評価

最初の方法は、供給者から提供された統計データの受領と評価です。

この方法は、特に長期的に安定した品質を保つために、供給者が製造した製品の統計的データを受け取り、それを分析する方法です。

これには、以下のようなステップが含まれます。

  • 供給者からのデータ提供:供給者が、製品の品質に関する統計的な情報や、製品の品質管理に使用したデータ(例えば、不良率やパフォーマンスの傾向など)を提供します。
  • データの評価:受け取った統計データをもとに、製品が規定された品質基準を満たしているかを評価します。統計的な手法を用いて、品質が一定範囲内で安定しているか、偏差が許容範囲内かを確認します。

この方法は、供給者との信頼関係が強く、製品の品質が安定している場合に有効です。

また、供給者の品質管理体制が確立されており、長期的にデータを追跡して評価できる状況であれば、効果的に機能します。

3.2 パフォーマンスに基づく抜取り検査

次に、パフォーマンスに基づく抜取り検査が挙げられます。

この方法は、製品のパフォーマンスに関する基準を設定し、それに基づいて抜き取り検査を行うものです。

具体的には、以下のようなステップで進行します。

  • 抜取り基準の設定:製品の性能や品質を測定するために、どのようなパフォーマンス基準を設けるかを決定します。例えば、耐久性、機能、精度などが評価される場合があります。
  • 抜き取り検査:製品の中からランダムにサンプルを抽出し、そのパフォーマンスを検査します。通常、サンプルサイズや抜き取りの方法は統計的手法に基づきます。
  • 結果の評価:検査結果がパフォーマンス基準を満たしていれば、その供給者から提供された製品は受け入れ可能であると判断します。

抜取り検査は、一定の確率で品質を検証するため、全数検査に比べてコストを抑えながらも信頼性を確保することができます。

ただし、検査結果が不良品のリスクを示す場合には、より詳細な調査や全数検査が必要となることがあります。

3.3 供給者のサイトでの第二者または第三者評価

第二者(自社)や第三者(外部機関)の評価も、外部提供品の検証方法の一つです。

この方法は、供給者の製造工程や品質管理体制を直接評価するもので、以下のように行われます。

  • 自社評価(第二者評価):供給者の製造施設に出向き、品質管理体制や製造プロセスを直接評価します。これにより、製造現場での品質管理の実態を確認することができます。
  • 外部機関による評価(第三者評価):第三者機関が供給者の製造工程や品質管理体制を評価する方法です。これは、独立した第三者が供給者の適合性を検証するため、信頼性が高い評価方法として利用されます。

この方法は、供給者が品質管理体制をどれだけ整備しているかを直接確認できるため、特に高リスクな部品や重要な製品の場合に有効です。

3.4 指定された試験所による部品評価

指定された試験所による部品評価は、特定の試験所を利用して、部品の機能や品質を検証する方法です。

この方法には以下のステップが含まれます。

  • 試験所の選定:供給者が提供した部品や製品を評価するために、信頼性のある試験所を選定します。試験所は、通常、業界標準や規格に基づく試験を実施できる資格を持っている必要があります。
  • 部品評価:選定された試験所で、部品が規定された機能や性能基準を満たしているかを試験します。これには、機械的性能、化学的分析、耐久性テストなどが含まれます。

指定された試験所による評価は、特に高精度が求められる部品や製品に対して有効です。

また、試験所の結果を基に、供給者の品質を検証することができます。

3.5 顧客と合意した他の方法

最後に、顧客と合意した他の方法も使用することができます。

この方法では、顧客と協議して、どのような検証方法を採用するかを合意し、それに従って外部提供品を検証します。

顧客の要求に基づく独自の検証方法が適用されることもあります。

 

4. 結論

IATF16949「8.6.4 外部から提供される製品及びサービスの検証及び受け入れ」の要求事項は、外部供給品の品質を確保するために不可欠なプロセスです。

組織は、供給者から提供された製品やサービスが品質基準を満たしているかを確認するため、統計データの評価、抜取り検査、第三者評価、試験所による部品評価など、複数の方法を用いることが求められます。

これらの方法を適切に実施することによって、外部供給品の品質を効果的に管理し、最終製品の品質を確保することができます。

また、顧客の信頼を得るためにも、透明性とトレーサビリティを確保することが重要です。