IATF 16949 8.7.1.3項:疑わしい製品の管理【要求事項解説】

はじめに

IATF16949規格における「8.7.1.3 疑わしい製品の管理」は、品質管理システムにおいて特に重要な要素の一つです。

この要求事項は、製造プロセスにおいて疑わしい製品や未確認の製品を適切に管理し、誤って出荷されることがないようにするための指針を提供します。

疑わしい製品や未確認の製品は、その品質が不確かであるため、出荷や使用を前提とする前に慎重に取り扱う必要があります。

本記事では、IATF16949「8.7.1.3」の要求事項を深堀りし、疑わしい製品の管理に関する重要なポイントを解説します。

特に、疑わしい製品がどのように分類され、どのような方法で管理されるべきか、そしてどのように従業員に対して適切な教育訓練が行われるべきかについて詳述します。

 

1. 疑わしい製品とは?

1.1 疑わしい製品の定義

IATF16949の「8.7.1.3」の要求事項における「疑わしい製品」とは、製造や検査の過程で品質に不確実性があると判断される製品を指します。

具体的には、以下のような製品が疑わしい製品に該当します。

  • 品質が確認できていない製品:製造後に品質が確認されていない、もしくはその確認が不十分な製品。
  • 設計や製造の工程で問題が疑われる製品:製品が設計通りに製造されていない、もしくは製造工程で予期しない問題が発生した可能性がある製品。
  • 外観や機能が不明確な製品:検査時に不良が確認されなかったが、外観や機能的に不安が残る製品。
  • 測定機器やプロセスの不具合によって検査が不十分である製品:適切な測定機器の不具合や検査プロセスに問題があった場合に、品質が保証できない製品。

疑わしい製品が発生した場合、そのまま生産ラインや顧客に流通させることはできません。

これらの製品は、「不適合製品」として扱う必要があり、適切な管理が求められます。

 

2. 疑わしい製品を不適合製品として管理する理由

2.1 不適合製品のリスク

製造業において「不適合製品」の管理は、顧客に対する品質保証や企業のブランド価値を保つために非常に重要です。

もし疑わしい製品が不適切に扱われ、そのまま出荷された場合、以下のようなリスクが発生します。

  • 顧客からの信頼喪失:品質に疑問のある製品が顧客に届けられた場合、顧客の信頼を失うだけでなく、契約違反にもつながります。
  • 法的な問題:特に自動車産業においては、安全性や品質に対する規制が厳しく、不適合製品が事故や問題を引き起こすと、法的な責任を問われることもあります。
  • コストの増大:不適合製品が発生すると、その後のリワークや返品、補償などのコストがかかり、最終的には企業の利益を圧迫することになります。

したがって、疑わしい製品を不適合製品として即座に分類し、適切に管理することは、企業の信頼性を守るための基本的な対策と言えるのです。

2.2 不適合品の処理における重要性

疑わしい製品が不適合品として管理されることにより、その後の処理方法が一貫して行われることになります。

これには、製品の隔離、修理、再検査などが含まれ、最終的に顧客に提供される製品が確実に規定の品質基準を満たしていることを保証します。

 

3. 疑わしい製品の管理プロセス

IATF16949「8.7.1.3」の要求事項では、疑わしい製品を適切に管理するための具体的な方法が求められています。

以下のような管理プロセスが必要です。

3.1 疑わしい製品の識別

疑わしい製品が発生した場合、まず重要なのはその製品を迅速に識別することです。

識別された製品は、他の製品と混ざらないようにし、「不適合品」として特定する必要があります。

識別方法としては、ラベルを付けたり、特別なマーキングを施すことが一般的です。

さらに、疑わしい製品は他の製品と区別できるように隔離され、誤って出荷されるリスクを防ぎます。

この隔離は物理的な場所で行われることが多いですが、情報システム上でも不適合品のステータスを管理し、製品が次の工程に進むことを防ぎます。

3.2 隔離と監視

製品が「疑わしい」とされた場合、その後の処理については慎重に行わなければなりません。

まず、隔離することで、誤って他の製品と一緒に処理されることを防ぎます。

この段階での隔離は、製品を一時的に保管するための場所に移すだけでなく、その後の検査や評価が行われるまで適切な監視を行うことも含まれます。

3.3 教育訓練の実施

IATF16949では、全ての適切な製造要員が、疑わしい製品や不適合製品の封じ込め方法について教育訓練を受けることを求めています。

これにより、従業員が疑わしい製品に遭遇した際に適切な対応を行うことができ、全体の品質管理の効果が高まります。

教育訓練は、以下のような内容を含むべきです。

  • 不適合製品の識別方法:疑わしい製品をどのように識別し、管理すべきか。
  • 封じ込め方法:不適合製品が混ざらないように隔離し、その後の処理方法を守る方法。
  • 報告手順:問題の製品が発生した場合、どのように上司や関係部門に報告するか。
  • 再検査や修理の判断基準:製品の修理や再検査が必要かどうかを判断する基準。

これらの教育訓練を定期的に実施することで、疑わしい製品が発生した際に、全従業員が迅速に適切な対応を行えるようになります。

3.4 不適合製品の評価と処理

疑わしい製品が不適合品として扱われる場合、その後の処理方法は評価に基づいて決定されます。

主な処理方法には以下のようなものがあります。

  • 修正:製品が修理可能であれば、修正作業を行い、要求事項を満たすか再確認します。
  • 再検査:再検査を実施し、問題が解決されたかを確認します。
  • 廃棄:修正や再検査が不可能な場合、その製品は廃棄することになります。

このプロセスにおいて重要なのは、どのように処理されたか、どのような対応が取られたかの記録を保持することです。

この記録は、将来の品質改善に役立ちます。

 

4. 結論

IATF16949の「8.7.1.3 疑わしい製品の管理」は、品質管理システムの中で非常に重要な役割を担っています。

疑わしい製品や未確認の製品を適切に識別し、迅速かつ正確に管理することで、顧客に対して高品質な製品を提供し続けることができます。

企業にとって、品質の確保は競争力を保つための鍵となります。

疑わしい製品の適切な管理は、そのための基本的なプロセスであり、企業の信頼性と品質管理能力を向上させるために不可欠な要素です。