IATF 16949 8.7.1.4項:手直し製品の管理【要求事項解説】

はじめに

IATF16949の規格における「8.7.1.4 手直し製品の管理」は、製品の品質管理プロセスにおける重要な要素であり、手直し作業が必要な製品に対して適切なリスク評価や管理が求められることを示しています。

この要求事項は、品質不良が発生した場合にその製品を修正するための明確なプロセスと、それに関連するリスクを管理するための基準を提供します。

手直しが必要な製品をどのように取り扱い、どのような基準で修正作業を進めるかを理解し、適切に実行することが、製品の品質を保ち、最終的に顧客満足を達成するためには不可欠です。

本記事では、IATF16949「8.7.1.4 手直し製品の管理」の要求事項を詳細に解説し、実際の品質管理においてどのように適用すべきかを説明します。

 

1. 手直し製品の管理とは?

1.1 手直し製品の定義

手直し製品とは、製造または検査の過程で不適合が発生し、その不適合を修正する必要がある製品を指します。

手直しは、製品が設計や仕様に適合するようにするための修正作業であり、通常は製品が顧客に出荷される前に実施されます。

手直し作業が必要な場合、その製品は一時的に「不適合製品」として分類され、適切な処理が行われるまで使用や出荷が禁止されます。

手直し作業を行うことによって、製品が元の仕様や要求に適合するように修正されることが求められます。

1.2 手直しが発生する原因

手直しが発生する原因としては、以下のような要因が考えられます。

  • 製造工程での誤差:製造過程での人為的ミスや機械の不具合が原因で、製品が設計通りに作られなかった場合。
  • 検査不合格:品質検査で製品が基準を満たさない場合。
  • 外部要因:外部環境やサプライチェーンの影響で、製品が不良品として判定される場合。
  • 設計変更:設計変更に伴い、製品が以前の仕様に適合しなくなった場合。

 

2. 手直し前のリスク評価

2.1 リスク分析の重要性

IATF16949「8.7.1.4」の規定によると、手直しを開始する前に、リスク分析を実施することが義務付けられています。

このリスク分析は、手直し作業が製品に与える影響を事前に評価し、修正作業が有効であるかを確認するために重要です。

特に、手直しによって製品の機能や性能が損なわれないか、また新たな不具合が発生しないかを検討する必要があります。

リスク分析の手法としては、FMEA(Failure Modes and Effects Analysis:故障モード影響解析)が広く使用されています。

FMEAを用いて手直しが行われる前に、次の点を評価します。

  • 手直しが製品に与える影響:手直しによって製品の性能や安全性に悪影響を与える可能性があるか。
  • 手直しの必要性:手直しを行うことが本当に必要なのか、それとも製品を交換する方が良いのか。
  • リスクの評価:手直しが最終的に問題を解決するかどうか、またその手直しによって新たな不具合が発生するリスクを評価。

リスク分析を通じて、手直し作業に関わるリスクを最小限に抑えるための対策を講じることが可能になります。

2.2 顧客の承認

IATF16949では、手直しが必要な製品について、顧客からの承認を得ることが求められています。

特に、手直しが製品の重要な仕様や性能に影響を与える場合、顧客の承認なしに作業を進めることはできません。

顧客の承認を得るためには、手直しが行われる前に製品の不適合がどのように修正されるかについて詳細な情報を提供し、顧客からの承認を受ける必要があります。

顧客からの承認を得ることにより、修正作業が正式に認められ、後のトラブルを防ぐことができます。

 

3. 手直し作業の確認と文書化

3.1 コントロールプランの遵守

手直し作業が行われる際には、コントロールプランに従うことが必要です。

コントロールプランは、製品の製造過程や品質検査の基準を文書化したもので、手直し作業もこのプランに従って実施されるべきです。

コントロールプランには、手直し作業をどのように実施し、どのように確認するかの手順が明記されています。

手直し作業の確認には、再検査トレーサビリティが重要です。

手直し後には必ず製品が元の要求仕様に適合していることを再確認するための検査が行われ、すべての情報は記録として残す必要があります。

3.2 手直し確認のプロセス

手直しを行った後、その製品が元の仕様に適合しているかを確認するためのプロセスは、文書化しておく必要があります。

手直し確認のプロセスは以下のような流れになります。

  1. 手直し内容の記録:手直しが実施された内容、理由、影響を文書として記録します。
  2. 再検査の実施:手直し後、製品が要求仕様を満たすかを再検査します。
  3. 確認書類の作成:手直しが正しく行われ、再検査を通過したことを証明する文書を作成し、トレーサビリティを確保します。

これらの確認作業を経て、手直し後の製品は適合品として認められ、出荷準備が整います。

 

4. 手直しした製品の記録とトレーサビリティ

4.1 手直し記録の保持

手直しが行われた製品については、手直し作業の詳細な記録を保持することが求められます。

この記録には以下の情報が含まれるべきです。

  • 手直しの理由:手直しが必要になった理由や背景。
  • 手直しの内容:どのような修正作業が行われたかの詳細。
  • 手直しの担当者:手直し作業を担当した作業者や部門。
  • 再検査結果:手直し後に実施された再検査の結果。

これらの記録は、後で問題が発生した場合に参照できるように保存しておく必要があります。

これにより、手直し作業が適切に行われたことを証明することができ、製品のトレーサビリティが確保されます。

4.2 トレーサビリティ情報

手直しした製品については、トレーサビリティを確保するために、手直しが行われた製品がどのロットやバッチに属しているかを追跡できるようにします。

この情報を保持することで、将来的に問題が発生した場合、どの製品が手直しを受けたかを迅速に確認し、適切な対応を取ることができます。

 

5. 結論

IATF16949「8.7.1.4 手直し製品の管理」は、製品に不適合が発生した際に、その修正作業を適切に管理し、品質を確保するための重要なプロセスです。

手直しを行う際には、リスク分析、顧客の承認、適切な確認手順、記録の保持が不可欠です。

また、手直し後の再検査とトレーサビリティを確保することで、品質の信頼性を高めることができます。

手直し製品の管理は、製品の品質維持だけでなく、顧客との信頼関係を築くためにも非常に重要な役割を果たします。

従って、組織は手直しプロセスを十分に理解し、実行するための体制を整えることが求められます。