IATF 16949 7.1.5.3.1項:内部試験所【要求事項解説】

はじめに

IATF 16949は、特に自動車産業における品質マネジメントシステムに関する規格で、品質管理のための高度な要求事項が盛り込まれています。

その中で、「7.1.5.3.1 内部試験所」というセクションは、組織内部における試験所(またはラボ)の運営と管理に関する具体的な要求事項を定めています。

この要求事項は、組織が製品の品質を確保するために実施する検査や試験の信頼性を高めることを目的としており、試験所の適切な運営を通じて、最終的に顧客に信頼性の高い製品を提供するための基盤を築きます。

本記事では、IATF 16949の「7.1.5.3.1 内部試験所」に関する要求事項を詳細に解説し、組織がどのようにこの要求事項を実行し、内部試験所を管理していくべきかについて考察します。

 

1. 内部試験所の役割と重要性

内部試験所とは、組織内に設置された施設で、製品や部品の検査、試験、または校正などのサービスを提供する場所を指します。

自動車産業においては、製品の品質を保証するためにさまざまな検査や試験が行われ、その結果が製品の安全性や信頼性に直結します。

そのため、内部試験所は品質マネジメントシステムの一部として非常に重要な役割を果たしています。

IATF 16949「7.1.5.3.1」では、内部試験所に求められる要件を定めており、これらの要件を満たすことで、試験所の信頼性が高まり、試験結果が正確で再現性があり、最終的に顧客の要求に適合した製品を供給できるようになります。

 

2. 内部試験所の適用範囲と要件

IATF 16949「7.1.5.3.1」では、内部試験所が満たすべき基本的な要求事項が定められています。

これらを順に解説します。

2.1 内部試験所の適用範囲

内部試験所は、製品やプロセスに関連する試験、検査、または校正のサービスを実行する能力を持っている必要があります。

そのため、試験所の運営においては、適用範囲の明確化が求められます。適用範囲は、内部試験所が対応可能なサービスや検査の種類、試験対象、試験に使用する設備などを詳細に記述したものです。

この適用範囲は、組織の品質マネジメントシステム文書に含めておく必要があります。

これにより、試験所の役割が明確化され、試験所内で行うべき業務が一貫して管理されることになります。

2.2 試験所の技術手順の適切性

内部試験所が実施する検査や試験には、技術的な手順や方法が必要です。

このため、試験所は技術手順の適切性を確保しなければなりません。

技術手順は、試験所が試験を実施する際に遵守すべき具体的な指針や手順書です。

技術手順には、例えば次のような内容が含まれます:

  • 試験方法(例:引張試験、硬度試験、耐久性試験など)
  • 試験機器や設備の使用方法
  • 試験中に記録すべきデータ
  • 試験結果の判定基準や評価方法

これらの手順が適切であることを確認するためには、定期的なレビューや更新が求められます。

また、技術手順は可能な限り標準化されたものを使用し、最新の技術や規格に基づくものであることが重要です。

2.3 試験所要員の力量

試験所内で試験や校正を行うためには、十分な専門知識や技能を持った要員が必要です。

IATF 16949「7.1.5.3.1」の要求事項では、試験所の要員の力量に関して、明確な基準が求められています。

試験所要員の力量には以下が含まれます:

  • 試験に必要な技術的知識や経験
  • 試験機器や設備の操作能力
  • 測定結果を正確に解釈し、必要に応じて問題を特定できる能力

試験所の要員は、必要に応じて定期的に教育・訓練を受け、最新の知識や技術に精通している必要があります。

特に、技術の進歩に伴い、試験機器や試験方法が変化することもあるため、要員の能力を高めることが求められます。

2.4 試験の実施能力

内部試験所は、要求された試験を正確に実施する能力を持っていることが求められます。

この能力は、試験所が使用する機器や設備が適切に校正され、精度が保証されていることに依存します。

また、試験結果が再現性を持ち、他の場所や時間でも同様の結果が得られることが求められます。

試験所は、必要な試験を実施するために適切な機器や設備を整え、これらを定期的に点検・校正することで、試験の精度を保ちます。

また、試験の結果が正確で信頼できるものであることを証明するために、検証データやトレーサビリティ情報を提供することが求められます。

2.5 試験所が遵守すべきプロセス規格

試験所が実施する試験は、該当するプロセス規格に基づいて行う必要があります。

これには、ISOやASTM、ENなどの国際標準が含まれます。これらの規格は、試験方法や機器の精度、試験条件などについて詳細に規定しており、試験所はこれらの規格に従って業務を実施することが求められます。

万が一、該当する標準規格が存在しない場合、組織は自らの測定システムの能力を検証する手法を定め、それに基づいて試験を実施しなければなりません。

これにより、規格がない場合でも適切な試験が行われ、製品やプロセスの品質が保証されることになります。

2.6 顧客要求事項の遵守

内部試験所は、顧客が要求する試験項目や条件を遵守する必要があります。

顧客からの特別な要求がある場合、その要求に基づいた試験を実施し、結果を提供することが求められます。

これにより、顧客の信頼を得ることができ、顧客満足度の向上に繋がります。

2.7 関係する記録のレビュー

試験所は、試験結果や校正記録など、試験に関連するすべての記録をレビューする必要があります。

これにより、試験結果が適切であることを確認し、異常があった場合には迅速に対応できます。

また、記録はトレーサビリティを確保するために長期間保存され、後で必要なときに確認できるようにしておかなければなりません。

 

3. 内部試験所の第三者認定

IATF 16949では、内部試験所がISO/IEC 17025(またはそれに相当する規格)に基づく第三者認定を受けることが推奨されています。

ISO/IEC 17025は、試験所が適切な品質管理を実施し、信頼性のある結果を提供するための国際的な基準であり、この認定を受けることで、試験所が要求事項を満たしていることを証明することができます。

 

4. 結論

IATF 16949の「7.1.5.3.1 内部試験所」は、組織が自社内で実施する検査や試験の信頼性を高めるための基盤を提供します。

内部試験所は、適切な技術手順、要員の力量、試験の実施能力、適用規格の遵守など、多岐にわたる要件を満たす必要があります。

これらの要件を満たすことで、組織は正確で再現性のある試験結果を提供し、顧客に対して高品質な製品を届けることができるようになります。