IATF 16949 8.3.5.1項:設計・開発からのアウトプット-補足【要求事項解説】

はじめに

IATF 16949の「8.3.5.1 設計・開発からのアウトプット-補足」は、製品設計からのアウトプットに関する具体的な要求事項を示しています。

この規定は、設計・開発プロセスから得られる成果物が、インプット要求事項をどのように満たし、製品としての品質を担保するかを定めたものです。

アウトプットは製品の成功に直結するため、詳細で正確な情報を提供する必要があります。

本記事では、製品設計からのアウトプットに含まれるべき10の項目(a)〜(j))について詳しく解説します。

 

1. 設計・開発からのアウトプットの役割

製品設計からのアウトプットは、設計プロセスを通じて要求される要素が正確に実現されているかを確認するための証拠です。

このアウトプットは、設計の段階で発生するさまざまな問題に対処し、最終的に顧客の要求を満たすために重要な役割を果たします。

IATF 16949は、設計からのアウトプットが明確で検証可能な形式で表現されることを求めています。

このことにより、設計の適合性をチェックし、製造におけるリスクを軽減することができます。

 

2. アウトプットの要素の詳細解説

IATF16949では、設計・開発からのアウトプットに含めるべき重要な要素として、次の10項目が挙げられています。

これらの項目は、製品設計のあらゆる段階で求められる情報や結果を反映し、製品の品質確保に貢献します。

(a) 設計リスク分析(FMEA)

FMEA(Failure Mode and Effects Analysis、故障モード影響解析)は、製品設計において潜在的なリスクや故障の可能性を特定し、その影響を評価するための手法です。

製品設計におけるFMEAは、設計段階で発生する可能性のある問題点を事前に洗い出し、リスクを最小限に抑えるための措置を講じるために必要です。

このプロセスでは、各部品やシステムが故障した場合の影響を分析し、そのリスクを管理します。

FMEAは、製品の信頼性と安全性を確保するために不可欠であり、設計の段階で潜在的な問題を早期に発見し、適切な対策を講じることが可能になります。

具体的には、FMEAを通じて設計上のリスクを減らし、製品が市場で直面する問題を予防することができます。

(b) 信頼性調査の結果

製品が長期的に安定したパフォーマンスを発揮するためには、設計段階での信頼性の評価が不可欠です。

信頼性調査は、製品の使用環境や予想されるストレスを考慮し、製品がどの程度まで性能を維持できるかを評価するものです。

この結果は、製品が顧客の期待に応えるだけでなく、事故や故障を避けるためにも重要です。

信頼性調査は、特に自動車業界のような過酷な使用条件下で製品が使用される場合に非常に重要です。

設計段階での信頼性テストは、後々の製品の故障率を低減させるための基盤を作り、顧客満足度を向上させます。

(c) 製品の特殊特性

製品における「特殊特性」は、製品の品質や機能にとって特に重要な部分を指します。

これらは、設計段階で特別に管理する必要があり、品質管理が厳格に求められる特性です。

例えば、安全性に直結する部分や、性能に重大な影響を与える部分が該当します。

特殊特性を特定し、それに対する管理方法を確立することで、製品のリスクを最小化し、製造段階での不良品を減らすことができます。

これにより、製品が顧客の要求を満たすことを確実にし、長期的な品質保証を提供します。

(d) DFSS、DFMA、FTAのような、製品設計のポカヨケの結果

DFSS(Design for Six Sigma)、DFMA(Design for Manufacturability)、FTA(Failure Tree Analysis)は、製品設計の初期段階で使用されるポカヨケ(ミス防止)の手法です。

これらは、設計段階でリスクを最小限に抑え、製品が製造可能で品質を確保できるように設計します。

  • DFSS は、品質を最適化するための手法で、製品設計の段階から品質を追求します。
  • DFMA は、製品が製造しやすいように設計する手法で、コスト削減や製造工程の効率化を図ります。
  • FTA は、故障の原因をシステム的に分析し、問題の根本原因を特定して対策を講じる手法です。

これらの手法を組み合わせることで、設計段階から製品の品質や製造コスト、リスクを管理することが可能になります。

(e) 3Dモデル、技術データパッケージ、製品製造の情報及び幾何寸法と公差(GD&T)を含む、製品の定義

製品設計における3Dモデルや技術データパッケージ(TDP)は、製品がどのように製造され、組み立てられるかを示す詳細な情報を含んでいます。

特に、「幾何寸法と公差(GD&T)」は、部品が製造工程でどのように精度よく作られるべきかを示す基準です。

3Dモデルと技術データパッケージは、設計の意図が正確に伝わるための重要なツールであり、製造における誤差を最小限に抑えるためのガイドとなります。

(f) 2D図、製品製造の情報、及び幾何寸法と公差(GD&T)

2D図面も、製品設計のアウトプットとして必要な情報です。

特に製品製造に関する情報やGD&Tは、製造部門が正確に部品を作成できるようにするために不可欠です。

これらの図面やデータは、製造工程をスムーズに進めるための基準となります。

(g) 製品デザインレビューの結果

製品デザインレビューは、設計の各段階で行われる重要な活動です。

設計チームが製品設計をレビューし、問題点や改善点を特定します。

このレビュー結果は、設計の完成度を高め、製品の品質を向上させるために重要な役割を果たします。

(h) サービス故障診断の指針並びに修理及びサービス可能性の指示書

サービス故障診断と修理指示書は、製品が市場に出た後の保守活動に役立ちます。

故障時の診断方法や修理手順を明確にすることで、製品の寿命を延ばし、顧客へのサービスを迅速に提供できます。

(i) サービス部品要求事項

サービス部品の要求事項は、製品が市場に出た後に必要となる部品のスペックや数量、供給方法についての指針を示します。

これにより、顧客が長期間にわたって製品を使用できるように、適切な部品の供給が確保されます。

(j) 出荷のための荷姿及びラベリング要求事項

製品が出荷される際の梱包やラベリングについての要求事項は、製品が安全に顧客に届き、使用されるために必要です。

ラベルには製品情報や警告、使用方法が記載されている必要があります。

 

3. 結論

IATF 16949の「8.3.5.1 設計・開発からのアウトプット-補足」は、設計プロセスにおける詳細なアウトプットを求めるものであり、製品が顧客の要求を満たすために不可欠な要素が含まれています。

これらの要素を適切に実施し、文書化することが、製品の品質を保証し、製造段階での問題を防ぐために重要です。