- 1 はじめに
- 2 2. マネジメントレビューへのインプット
- 2.1 (a) 品質不良コスト(内部不適合及び外部不適合のコスト)
- 2.2 (b) プロセスの有効性の指標
- 2.3 (c) 製品実現プロセスのプロセス効率性指標
- 2.4 (d) 製品適合性
- 2.5 (e) 現行の運用の変更及び新規施設又は新規製品に対してなされる製造フィージビリティ評価
- 2.6 (f) 顧客満足
- 2.7 (g) 保全目標に対するパフォーマンスのレビュー
- 2.8 (h) 補償のパフォーマンス(該当する場合には、必ず)
- 2.9 (i) 顧客スコアカードのレビュー(該当する場合には、必ず)
- 2.10 (j) リスク分析(FMEAのような)を通じて明確にされた潜在的市場不具合の特定
- 2.11 (k) 実際の市場不具合及びそれらが安全又は環境に与える影響
- 2.12 (l) 製品及びプロセスの設計開発中の規定された段階における測定の結果の要約
- 3 3. 結論
- 4 4. 関連項番
- 5 5. 内部監査での確認ポイントと質問例
はじめに
IATF 16949は、自動車業界における品質マネジメントシステムの国際規格として、製造業全体の品質向上を目的としています。
この規格の中で、「マネジメントレビュー」という重要な活動が定められており、品質マネジメントシステムの有効性を維持・向上させるために不可欠な要素となっています。
「9.3.2.1 マネジメントレビューへのインプット-補足」の要求事項は、マネジメントレビューにおいて重要な情報をどのように収集し、どの項目をレビューの対象として取り上げるべきかを明確に示しています。
本記事では、マネジメントレビューのインプットに含めるべき事項を詳しく解説していきます。
2. マネジメントレビューへのインプット
(a) 品質不良コスト(内部不適合及び外部不適合のコスト)
品質不良コストは、内部不適合(製造過程での不良)と外部不適合(顧客に納品後の不良)に分類されます。
内部不適合コストは再作業や廃棄にかかる費用、外部不適合コストは顧客クレームやリコールなどに関連する費用です。
これらを管理することはコスト削減と品質向上に繋がります。
(b) プロセスの有効性の指標
プロセスの有効性の指標は、製造や業務プロセスが目標に対してどれだけ効果的に機能しているかを示す指標です。
製造プロセスの例としては、生産性、納期遵守率、品質不良率などがあり、これらを定期的に評価することでプロセスの改善が促進されます。
(c) 製品実現プロセスのプロセス効率性指標
製品実現プロセスとは、製品の設計から製造、納品に至るまでのプロセスです。
例えば、この効率性指標として製品開発にかかる時間、コスト、設計変更の頻度などを測定し、プロセスの効率面での改善点を明確にします。
(d) 製品適合性
製品適合性は、製品が顧客の要求や規格に適合しているかを示す指標です。
製品が適合していない場合、顧客満足度が低下し、リコールなどの問題が発生するリスクがあります。
これを維持するために定期的な検査や監視が必要です。
(e) 現行の運用の変更及び新規施設又は新規製品に対してなされる製造フィージビリティ評価
新しい設備や製品、プロセス変更を実施する前に、製造が可能か、コストや品質に影響がないかを評価するプロセスです。
これにより、予期しない問題を未然に防ぎ、スムーズな運用を確保します。
(f) 顧客満足
顧客満足は、顧客のニーズや期待にどれだけ応えているかを測る重要な指標です。
顧客からのフィードバック(スコアカードやアンケート、クレーム対応など)を収集し、満足度を評価することで、品質改善の方向性を見定めます。
(g) 保全目標に対するパフォーマンスのレビュー
保全活動が設定した目標にどれだけ貢献しているかを評価します。
例えば、設備の稼働率や故障頻度、メンテナンスの効果を確認し、保守活動の改善点を特定します。
(h) 補償のパフォーマンス(該当する場合には、必ず)
製品の不良や不適合に対する補償(保証や修理)のパフォーマンスを評価します。
補償が多い場合、製品やプロセスに問題がある可能性が高いため、その原因を突き止め、改善策を講じる必要があります。
(i) 顧客スコアカードのレビュー(該当する場合には、必ず)
顧客スコアカードは、顧客からの評価やパフォーマンスを示す指標です。
納期、品質、価格など、顧客が重視する項目で自社の評価を確認し、改善の必要性を見極めます。
(j) リスク分析(FMEAのような)を通じて明確にされた潜在的市場不具合の特定
FMEA(故障モード影響分析)などのリスク分析手法を用いて、製品やプロセスにおける潜在的な問題を予測し、市場での不具合発生リスクを最小限に抑えるための対策を講じます。
(k) 実際の市場不具合及びそれらが安全又は環境に与える影響
市場に出た製品で実際に不具合が発生した場合、その影響が安全性や環境にどのように関わるかを評価します。
この情報は、リコール対応や改良策を策定するための重要な指針となります。
(l) 製品及びプロセスの設計開発中の規定された段階における測定の結果の要約
製品やプロセスの設計段階で実施された各種測定結果を要約し、設計が適切に進行しているか、問題が発生していないかを評価します。
これにより、設計段階での問題を早期に発見し、改善に繋げることができます。
3. 結論
「9.3.2.1 マネジメントレビューへのインプット-補足」は、企業が品質マネジメントシステムを効果的に運用し、改善を推進するための基盤となるインプットを提供します。
これらの項目を適切に評価し、改善活動を行うことで、品質向上やコスト削減、顧客満足度の向上を実現することができます。
4. 関連項番
以下、関連項番の要求事項解説もあわせてご活用ください。
4.1 関連度:大(併読を推奨)
4.2 関連度:小
5. 内部監査での確認ポイントと質問例
5.1 内部監査での確認ポイント
(1) 品質不良コストの管理状況
- 内部不適合(再作業・廃棄費用)の把握と管理は適切か
- 外部不適合(顧客クレーム・リコール費用)の記録・分析は実施されているか
- 品質不良コスト削減に向けた改善活動が行われているか
(2) プロセス有効性のモニタリング
- プロセスパフォーマンス指標(生産性、納期遵守率、不良率)が設定されているか
- 定期的なレビューや改善活動が実施されているか
(3) 製品実現プロセスの効率性
- 開発リードタイム、設計変更頻度、コストなどの指標が評価されているか
- 効率改善のための具体的なアクションが実施されているか
(4) 製品適合性の確保
- 顧客要求事項や規格に対する適合性がモニタリングされているか
- 定期的な検査・監視の仕組みが維持されているか
(5) 新規導入・変更時のフィージビリティ評価
- 新製品や新設備導入時にフィージビリティ評価が行われているか
- コスト・品質・リスクへの影響を事前に評価しているか
(6) 顧客満足の評価
- 顧客フィードバック(スコアカード、アンケート、クレーム対応)が収集されているか
- 顧客満足度改善に向けた取組みが実施されているか
(7) 保全活動のパフォーマンス
- 設備稼働率、故障頻度、メンテナンス実績のレビューが行われているか
- 保全目標が達成されているか
(8) 補償パフォーマンス(該当する場合)
- 製品保証や修理対応の実績が記録・分析されているか
- 補償が多発している場合の是正処置が実施されているか
(9) 顧客スコアカードのレビュー(該当する場合)
- 顧客からの評価(納期、品質、価格)を把握しているか
- 評価が低い項目に対して改善計画が策定されているか
(10) 潜在的不具合の特定とリスク分析
- FMEAなどのリスク分析手法が活用されているか
- 潜在的市場不具合のリスク低減策が講じられているか
(11) 市場不具合の把握と影響評価
- 実際に発生した市場不具合の記録・分析が行われているか
- 安全・環境への影響が評価されているか
(12) 設計・開発段階での測定結果のレビュー
- 設計開発の各段階で測定・検証が行われているか
- 測定結果の要約がレビューに反映されているか
5.2 内部監査での質問例
(1) 品質不良コストについて
- 内部不適合や外部不適合に関するコストはどのように把握・管理していますか?
- 品質不良コスト削減のためにどのような改善活動を行っていますか?
(2) プロセス有効性について
- 生産性や納期遵守率、不良率などの指標はどのようにモニタリングしていますか?
- プロセス改善活動の具体例を教えてください。
(3) 製品実現プロセスについて
- 開発リードタイムや設計変更頻度をどのように管理していますか?
- 効率改善のために実施した取り組みを教えてください。
(4) 製品適合性について
- 顧客要求事項や規格への適合性をどのように確認していますか?
- 定期的な検査・監視の仕組みはありますか?
(5) フィージビリティ評価について
- 新規製品や設備導入時に、どのようにフィージビリティ評価を行っていますか?
- その結果をどのように改善やリスク低減に活用していますか?
(6) 顧客満足について
- 顧客満足度はどのように把握していますか?
- 顧客からのクレームやフィードバックをどのように改善活動につなげていますか?
(7) 保全活動について
- 設備稼働率や故障頻度はどのようにモニタリングしていますか?
- 保全目標の達成状況をどのように評価していますか?
(8) 補償パフォーマンスについて(該当する場合)
- 製品保証や修理対応の実績はどのように管理していますか?
- 補償の多発時にどのような是正措置を取っていますか?
(9) 顧客スコアカードについて(該当する場合)
- 顧客スコアカードの結果はどのように確認していますか?
- 評価が低い項目に対して改善策を取った事例はありますか?
(10) リスク分析について
- FMEAなどのリスク分析をどのように実施していますか?
- 潜在的市場不具合のリスクをどのように低減していますか?
(11) 市場不具合について
- 市場で発生した不具合をどのように把握していますか?
- 安全や環境への影響を評価した事例を教えてください。
(12) 設計・開発段階の測定について
- 設計開発段階で実施した測定結果はどのようにレビューに反映していますか?
- 測定結果をもとに改善につなげた事例はありますか?