IATF 16949 7.5.2項:作成及び更新【要求事項解説】

はじめに

IATF16949の「7.5.2 作成及び更新」は、品質マネジメントシステム(QMS)の文書化した情報を作成及び更新する際に必要な具体的な要件を示しています。

この要求事項は、組織が運用している品質マネジメントシステムを支える文書を正確に作成し、効果的に管理するための重要な基準を提供します。

この記事では、「7.5.2 作成及び更新」に関する要件を詳細に解説し、実務的な運用方法についても触れていきます。

 

1. IATF16949「7.5.2 作成及び更新」の概要

IATF16949の「7.5.2 作成及び更新」では、品質マネジメントシステムに関連する文書(文書化した情報)の作成、更新、管理についての基本的な要件を規定しています。

この規定は、組織がQMSを効果的に運用するために、文書が正確で適切に管理されることを保証するために設けられています。

文書化した情報は、品質方針、手順書、作業指示書、記録など、組織の活動を支えるすべての文書を含みます。

 

2. 作成及び更新の際に確実にすべき事項

IATF16949「7.5.2」では、文書化した情報を作成及び更新する際に、以下の4つの事項を確実にしなければならないとしています。

2.1 適切な識別及び記述

文書化した情報を作成する際、最も重要なのはその識別と記述の方法です。

これにより、文書が誰によって作成され、どのような内容を持ち、いつ更新されたのかが一目で分かるようになります。

具体的には、次の項目が含まれます:

  • タイトル:文書の内容を簡潔に表すタイトルをつけることが重要です。例えば、「品質マニュアル」や「工程管理手順書」など、内容に即した分かりやすいタイトルを付けます。
  • 日付:文書の作成日および更新日を明記することが求められます。これにより、最新の情報がいつ作成されたかを追跡でき、文書のバージョン管理が可能になります。
  • 作成者:文書を作成した担当者を記載します。これにより、文書の内容に関して責任を持つ人物が明確になり、必要に応じて質問や確認が行えるようになります。
  • 参照番号:文書の参照番号を付けることで、文書の識別を容易にします。特に大量の文書を管理している組織では、番号付けが重要です。例えば、規定文書には「QP-001」などの番号が付けられます。

このように、文書の識別と記述を適切に行うことで、文書管理の効率化やトレーサビリティの向上を実現することができます。

2.2 適切な形式及び媒体

文書化した情報は、その内容に最も適した形式と媒体で作成されるべきです。

形式や媒体が不適切であると、情報の理解や利用が難しくなり、結果的に品質マネジメントシステムの効果が低下する可能性があります。

  • 形式:文書の形式は、組織のニーズや利用者の要件に応じて選択されるべきです。例えば、文章主体の文書、表形式の文書、図表を多く含む文書など、形式の選定は文書の目的に合わせて決定します。また、近年では、ソフトウェアやデジタルツールを使用した文書が主流になっており、これにより文書の作成、更新、共有が効率化されます。
  • 媒体:文書をどのような媒体で管理するかも重要なポイントです。紙媒体での管理から、電子媒体での管理に切り替えることで、文書の管理がより効率的になります。電子媒体(例えばPDF、Word、Excel、専用ソフトウェアなど)は、更新の際に迅速に対応できるだけでなく、複数の場所で共有・アクセスが可能になります。
  • 言語:文書の作成においては、組織の所在地や取引先の言語に応じた言語で記載する必要があります。グローバルに展開している企業では、複数言語で文書を作成することも求められる場合があります。この際、言語の整合性や翻訳精度にも注意が必要です。

2.3 適切性及び妥当性に関するレビュー及び承認

文書化した情報が作成された後、その内容が適切で妥当であるかを確認するために、レビューと承認のプロセスが必要です。

これにより、文書が品質マネジメントシステムの要求事項に合致していることが保証されます。

  • レビュー:文書の内容は、関連する部門や担当者によってレビューされる必要があります。このレビューは、文書が実際の運用に合致しているか、誤解を招く表現がないか、最新の要求事項を反映しているかを確認するために行われます。
  • 承認:レビューが完了した後、最終的に文書の承認を得ることが求められます。承認者は、通常、文書の内容に責任を持つマネジメント層や担当者であり、承認を通じて文書の正式な利用が開始されます。承認には、署名や承認日を記載する方法が一般的です。

2.4 定期的な更新と文書管理の重要性

IATF16949では、文書化した情報の「更新」も重要な要件として位置付けられています。

特に品質マネジメントシステムは動的なシステムであり、業務の変更や法規制の更新、新しい技術の導入などによって、文書が古くなったり不正確になることがあります。

そのため、文書を定期的に見直し、必要に応じて更新を行うことが求められます。

  • 定期的な更新:文書は一度作成したら終わりではなく、定期的に見直しを行い、業務の変化や品質マネジメントシステムの改善に合わせて更新することが必要です。定期的な更新が行われていないと、古い情報に基づいて業務が行われることになり、誤った判断や非効率なプロセスが発生する原因となります。
  • 文書管理システム:文書の作成、更新、管理を効率的に行うために、文書管理システムを導入することが有効です。このシステムは、文書のバージョン管理、アクセス権限の設定、更新履歴の追跡などを行い、文書管理の透明性と整合性を確保します。

 

3. 作成及び更新の実務的な運用方法

3.1 作成及び更新のワークフロー

組織が文書化した情報を適切に作成・更新するためには、明確なワークフローを構築することが必要です。

一般的なワークフローとしては、以下のステップが含まれます:

  1. 文書の作成:担当者が必要な文書を作成します。この際、適切な識別情報(タイトル、作成者、日付など)を記載します。
  2. レビュー:関係者によるレビューを行い、文書の内容が適切かどうかを確認します。
  3. 承認:最終的に管理者や担当者の承認を得て、文書が正式に確定します。
  4. 発行・配布:文書が完成したら、関係者に配布し、必要な場所に掲示や保管を行います。
  5. 定期的な更新:定期的に文書を見直し、必要に応じて更新を行います。

3.2 トレーニングと啓蒙活動

文書化した情報を適切に運用するためには、従業員がその文書を理解し、適切に使用できるようにするためのトレーニングも必要です。

新しい文書が作成・更新された際には、その内容に関する研修を実施し、従業員がその内容を理解し、業務に反映できるようサポートすることが重要です。

 

4. 結論

IATF16949の「7.5.2 作成及び更新」は、品質マネジメントシステムを支える文書化した情報を作成し、更新する際に必要な基準を示しています。

文書の作成・更新は、適切な識別、形式、媒体、レビューおよび承認が不可欠です。

また、文書が業務に適切に適用されるためには、定期的な更新と管理が重要であり、効果的な文書管理システムとワークフローの導入が求められます。