IATF 16949 8.3.4項:設計・開発の管理【要求事項解説】

はじめに

IATF 16949における「8.3.4 設計・開発の管理」は、製品やサービスの設計・開発プロセスを適切に管理し、その結果が顧客の要求を満たし、品質基準をクリアすることを保証するために重要な要求事項です。

設計・開発は、製品の品質を確保するための最初のステップであり、ここでのプロセス管理が最終的な製品品質に大きな影響を与えます。

本記事では、「8.3.4 設計・開発の管理」の要求事項を詳しく解説し、実務的な対応方法を提案します。

設計・開発プロセスの管理を通じて、どのように製品やサービスの品質を確保するかを探っていきます。

 

1. 要求事項の概要

IATF 16949「8.3.4 設計・開発の管理」では、組織が設計・開発プロセスを効果的に管理し、製品の品質を確保するために必要な活動を明確にしています。

具体的には、以下の6つの主要な要素が含まれています。

  1. 達成すべき結果の定義
  2. 設計・開発結果の評価
  3. インプット要求事項の満足度の検証
  4. 用途に応じた要求事項を満たすかどうかの妥当性確認
  5. 問題に対する必要な処置
  6. 文書化した情報の保持

これらの要素を確実に実行することで、設計・開発プロセスが品質基準を満たし、製品が顧客の要求を満たすことを確実にすることができます。

 (a)達成すべき結果を定める

設計・開発プロセスを開始する前に、組織は達成すべき結果を明確に定義する必要があります。

この「結果」は、製品が満たすべき要求事項を指し、顧客のニーズや期待に基づくものです。

具体的な活動

  • 顧客の要求の把握: 製品が解決すべき問題や顧客のニーズを正確に把握することが第一歩です。顧客の要求を設計・開発の目標に反映させることが重要です。
  • 目標設定: 設計開発の最終的な目標として、製品性能や品質基準、納期、コストなどを定めます。
  • リスク評価: 目標に対する潜在的なリスクを評価し、リスクを管理する手段を計画します。これにより、設計開発プロセスで発生する可能性のある問題に先手を打つことができます。

これにより、組織は明確な目標に向けて設計・開発プロセスを進めることができます。

 (b)設計・開発結果の評価

設計・開発の結果が顧客の要求事項を満たすかどうかを評価することは、製品品質の向上において不可欠なプロセスです。

組織は、設計・開発の各段階で成果物をレビューし、要求事項が適切に反映されているかどうかを確認します。

具体的な活動

  • 設計レビュー: 設計の各段階で、設計内容が顧客の要求を満たすかどうかを評価するレビューを行います。レビューには、設計担当者だけでなく、品質管理や製造部門などの関連部門の担当者も参加します。
  • 関係者間の情報共有: 各部門の意見を反映させることで、設計・開発プロセスが一貫性を持ち、製品が品質基準を満たすことを確認します。

レビュー活動を通じて、設計・開発の結果が顧客の期待に沿ったものであるかどうかを確実に確認することが求められます。

(c)インプット要求事項の満足度を確認する

設計・開発プロセスから得られるアウトプットが、インプットの要求事項を満たしているかどうかを検証することが求められています。

この検証は、設計・開発の各段階で行う必要があり、製品が必要とされる機能や性能を確実に提供することを確認します。

具体的な活動

  • 検証計画の作成: 検証活動を計画し、どのようにしてインプット要求事項が満たされているかを確認するのかを定めます。
  • テストと実施: 設計された製品が設計要求に基づく仕様を満たしているかを確認するために、適切なテストを実施します。例えば、機能テストや性能テストを実施して、要求事項が実際に達成されているかを確認します。
  • フィードバックと改良: 検証結果に基づき、問題が発見された場合は、設計の修正を行います。

インプット要求事項を満たしているかを確実にするためには、設計段階での検証が欠かせません。

(d)妥当性確認活動

設計・開発結果が指定された用途や意図された用途において、要求事項を満たすことを確実にするための活動です。

これには、製品が現実の使用条件下で適切に機能することを確認するための実験やフィールドテストが含まれます。

具体的な活動

  • フィールドテスト: 製品が実際の使用環境で意図した通りに機能するかを確認します。例えば、自動車部品であれば、実車での走行テストや耐久テストを実施します。
  • 妥当性確認試験: 設計が意図した通りに製品が機能するかを確認するための試験を実施します。これにより、設計変更や改善が必要かどうかを判断できます。

妥当性確認を通じて、製品が実際の使用環境においても問題なく機能することを確認することが求められます。

(e)問題に対する処置

設計・開発のレビュー、検証、妥当性確認の活動中に問題が明確になった場合、それに対する適切な処置を講じなければなりません。

問題が発生した場合には、迅速に対応し、製品の品質を保証するために必要な改善策を講じることが求められます。

具体的な活動

  • 原因分析: 問題が発生した場合、まずは原因を分析し、問題が発生した根本的な理由を特定します。
  • 是正措置の実施: 問題を解決するための是正措置を実施し、再発防止策を講じます。必要に応じて設計変更を行い、問題を根本的に解決します。
  • フォローアップ: 実施した是正措置が有効であることを確認するために、フォローアップを行い、再発を防止します。

(f)文書化した情報の保持

設計・開発の各段階で行った活動や検証結果、是正措置などはすべて文書化し、記録として保持することが求められます。

この文書化された情報は、後での確認や監査、改善活動に活用されます。

具体的な活動

  • レビュー記録の保持: 設計レビューの結果や検証結果を文書として記録し、必要な関係者がアクセスできるようにします。
  • 変更管理: 設計変更や修正が行われた場合、その内容を記録し、変更履歴として保持します。
  • 監査の準備: 設計・開発プロセスが監査される際に、文書化された情報が証拠として役立ちます。

文書化した情報は、組織の設計・開発プロセスが適切に実施されていることを証明する重要な証拠となります。

 

2.結論

IATF 16949「8.3.4 設計・開発の管理」は、製品の設計・開発プロセスを適切に管理し、品質を確保するための基本的な要求事項を示しています。

設計・開発の各段階でレビュー、検証、妥当性確認を実施し、問題が発生した際には迅速に処置を行い、すべての活動を文書化することが求められます。

これらの活動を通じて、組織は製品が顧客の要求を満たし、高品質であることを保証することができます。