IATF 16949 8.2.4項:製品及びサービスに関する要求事項の変更【要求事項解説】

はじめに

IATF16949は自動車業界の品質マネジメント規格であり、製造業のプロセスに関する非常に具体的な要求事項を定めています。

その中でも「8.2.4 製品及びサービスに関する要求事項の変更」は、顧客の要求や市場のニーズ、法規制などに応じた製品やサービスの要求事項が変更された場合に、組織がどのようにその変更に対応すべきかを明確に定めています。

この規定に従うことで、組織は品質の安定性と顧客満足を維持しながら、変化に柔軟に対応することができます。

本記事では、IATF16949の「8.2.4 製品及びサービスに関する要求事項の変更」の規定について、その内容と実施方法、文書化された情報の管理、そして変更が関連する人々にどのように伝えられるべきかを詳しく解説します。

 

1. 規定の背景と目的

「8.2.4 製品及びサービスに関する要求事項の変更」の規定は、組織が顧客からの新たな要求や変更された要求にどのように適切に対応するかを指示しています。

特に、自動車業界においては技術革新や法規制、環境問題などの影響で要求事項が頻繁に変化します。このような変化に適切に対応し、製品やサービスの品質を維持することが重要です。

規定の目的

  • 変更の適切な管理:顧客や規制機関からの変更要求があった際に、組織内でその変更を正しく管理する。
  • 文書の整合性の保持:変更が適切に反映されていることを確認し、関連する文書を正確に更新する。
  • コミュニケーションの強化:変更後の要求事項が関連するすべての関係者に理解され、適切に実施されるようにする。

これらの目的に従って、組織は要求事項が変更された際に、必要な措置を取ることが求められます。

 

2. 規定の詳細と実施方法

「8.2.4」では、製品及びサービスに関する要求事項の変更に対して、組織が実施すべき具体的な対応策として、関連する文書化した情報を変更することと、変更後の要求事項が理解されることを確実にすることが求められています。

これらを確実に実施するためには、以下のステップが必要です。

a) 関連する文書の変更

要求事項が変更された場合、その変更内容はすべて関連する文書に反映させる必要があります。

これには、以下のような文書が含まれます。

  • 仕様書:製品やサービスに関する仕様が変更される場合、仕様書の内容を即座に修正し、最新版を全関係者が利用できるようにします。
  • 契約書:顧客と結んだ契約において要求されていた条件が変更された場合、その契約書も更新する必要があります。
  • 品質管理文書:品質基準や検査基準が変更された場合、それに関連する品質管理文書(例:品質マニュアル、検査計画書など)を更新します。
  • プロセス文書:製造プロセスや工程が変更された場合、その変更内容をプロセスフローや作業指示書に反映させます。

文書の変更は、すべて記録として保持される必要があり、文書管理システムを使用して変更履歴を管理することが推奨されます。

b) 変更後の要求事項の理解と伝達

変更があった場合、その内容が関係者に確実に伝達され、全員がその変更を理解することが非常に重要です。

特に、製造や品質管理、購買部門などが変更に基づいて適切な対応を行えるよう、以下のような方法で情報を伝えることが求められます。

  • 社内通知システムの活用:組織内で変更された要求事項についての通知を行います。これは、全ての関連部門に影響が及ぶため、電子メール、イントラネット、会議などを通じて行われます。
  • ミーティングとトレーニング:特に大きな変更があった場合、その内容をチーム全体で理解するために会議を開き、変更後の要求事項に関するトレーニングを実施することが推奨されます。
  • フィードバックの収集:変更内容が十分に理解されているかを確認するために、関係者からフィードバックを収集し、誤解がないかをチェックします。

変更後の要求事項が正確に伝達されることで、現場での誤った解釈や手順のミスを防ぐことができます。

 

3. 文書化と変更管理の重要性

要求事項の変更に対応するために、関連する文書を適切に管理することは、品質マネジメントシステム(QMS)において非常に重要です。

文書化された情報は、変更が正確に実施された証拠となり、将来の監査や審査の際にも役立ちます。

具体的には以下の点が重要です。

a) 文書管理システムの利用

変更された要求事項に関する文書を管理するために、組織は文書管理システムを使用することが推奨されます。

このシステムを活用することで、文書のバージョン管理が容易になり、誰でも最新の文書にアクセスできるようになります。

また、過去の変更履歴を確認することができ、変更内容が一貫して実施されていることを確認できます。

b) 変更の履歴管理

変更が行われた際は、その内容と変更理由を記録として残すことが重要です。

これにより、後で変更の背景を確認したり、変更が組織の他のプロセスに与える影響を把握したりすることができます。

また、顧客からの要求変更に対する反応や対応履歴が残ることで、品質改善活動にも役立てることができます。

c) 変更通知の記録

変更通知の内容を記録に残すことで、誰がどのような変更を受けたかを確認することができます。

これにより、もし後から問題が発生した場合に、どの段階で何が変更されたのかを遡って確認することが可能となります。

特に、顧客からの要求が変更された場合、その内容が正確に伝達された証拠として役立ちます。

 

4. 変更の影響評価

要求事項の変更が発生した場合、その変更が組織の製造プロセスや品質に与える影響を事前に評価することが重要です。

この評価は、変更が実施される前に行い、以下のような影響を考慮する必要があります。

  • 製造プロセスへの影響:新しい要求に対応するために、製造プロセスや工程が変更される場合、それが生産性や品質にどのように影響を与えるかを評価します。
  • 品質管理への影響:品質基準や検査基準が変更された場合、それが品質保証プロセスに与える影響を評価し、新たな検査項目や承認プロセスを設ける必要があるかどうかを判断します。
  • 供給チェーンへの影響:変更された要求が部品や材料の調達に影響を与える場合、サプライヤーとの連携や調達計画を見直す必要があります。

このような影響評価を事前に行うことで、変更に伴うリスクを最小限に抑え、スムーズに新しい要求事項を適用することができます。

 

5. 結論

IATF16949「8.2.4 製品及びサービスに関する要求事項の変更」は、要求事項が変更された場合に組織がどのようにその変更に対応すべきかを定めています。

組織は、変更内容を関連する文書に適切に反映させ、関係者全員に変更事項を確実に伝達することが求められます。

また、変更が組織の製造プロセスや品質管理に与える影響を評価し、必要な対応を取ることも重要です。

この規定に従うことで、組織は顧客の要求に柔軟に対応し、品質を維持しながら市場の変化に対応することができます。

また、変更の管理が適切に行われることで、品質保証の強化や顧客満足度の向上が期待できます。